意味が無くても、名無しでも、みんな生きてる ~君に深海を見せたい理由

意味が無くても、名無しでも、みんな生きてる ~君に深海を見せたい理由

深海 もう一つの宇宙

なぜ深い海の底を調べるのでしょう。それも数千メートル隔てた暗黒の世界です。
私たちが『世界』として見ているのは、惑星表面を覆う地殻の、ほんの3割ほどでしかありません。
たとえば、ハワイのマウナケア山は、標高4205メートルですが、海底からの高さは10,203メートル、実体はエベレストよりも巨大な山です。しかし、大半が海面下に没している為、私たちの目には、「エベレストが世界一高い山」に映ってしまうのです。

実際、海面下には、地上の山に匹敵するような、高い海山がたくさん存在します。
もし、海水がすべて干上がってしまったら、私たちは、ヒマラヤ山脈より、もっと険しい山並みを目にすることができるでしょう。

そして、今、私たちが立っている大地の全容が、実際にはどうなっているのか、詳しく知ることが、地上の火山や地震の仕組み、果ては未来の地球の姿を知ることに繋がるのです。もし私たちが、かなりの確率で、噴火や地震を予測することが可能になれば、人命を救うこともできるでしょう。

それは果てしない道のりかもしれませんが、研究を積み重ねれば、いろんなことが明らかになるでしょう。

全ての鍵は、果てしない水の底にあるのです。

【リファレンス】 深海のダイナミズム

海洋に浮かぶ島々がどのように生成されたかアニメーションで分かりやすく解説。
地球のダイナミズムを間近に感じる海底火山が圧巻。

ダイナミックな海底火山の噴火。陸地の成り立ちを垣間見ることができます。

世界で最も新しい島々。いずれも海底火山の噴火で海上に姿を現しました。

こちらは深海での海底火山の噴火をとらえた貴重な映像。陸上に暮らす私たちの目には決して見えませんが、世界中の海の底で、このように活発な地殻活動が繰り広げられているのです。

世界の最深部、マリアナ海溝の概要と、そこに棲息する不思議な生物を紹介。

以下のパートは海洋小説『曙光』の抜粋です。詳しくは作品概要、もしくはタイトル一覧をご参照下さい。

【あらすじ】 深海の潜水艇からの実況

ウェストフィリア島と近海の鉱物資源を探査する為、ウェストフィリア開発公社の命を受けて、リズの又従妹のオリアナが深海調査のオファーにやって来る。開発公社の最大の出資者が悪名高い鉱山会社ファルコン・マイニング社であることから、ヴァルターは訝るが、一方で、ウェストフィリアの鉱物資源が大きな利益をもたらすこと、潜水艇の新米パイロットの境遇が厳しいことから、調査を引き受ける。その条件として、潜水艇からの実況を申し出るが、オリアナは彼の要望を無視し、のらりくらりと返事をかわす。

【小説の抜粋】 深海から実況する意義

『面白くないこと』の先も見てみよう

「ね、どうして、そこまで実況にこだわるの。ウェストフィリアに関する広報ならともかく、潜航調査の実況なんて、誰も興味を示さないわよ」

「どうして」

「だって、真っ暗なんでしょう。水族館みたいに色んな魚が泳いでるわけでもない。『ハイ、ただいま水深一〇〇〇メートルです、窓の外は真っ暗です。タコもイルカもいません』、そんなこと延々と聞かされて、視聴者が手を叩いて喜ぶと思う? 人食い鮫でも登場するならともかく、夜闇みたいな深海を何時間も見せられても退屈なだけだよ」

「何も無いことはないよ」

「じゃあ、真っ黒な水以外に何があるの? 私、一度だけシュノーケルで磯場に潜ったことがあるけど、岩がごろごろしてるだけで、何も無かったわよ」

「それは君が岩しか見てないからだよ」

「どういう意味」

「全てのものには意味がある。そこに存在する理由がね。岩一つといえど、生成するのに何百万年、何千万年の時間がかかってる」

「言いたい事は分かるけど、一般人には面白くも何ともないわよ」

「そうかな」

「ええ、そう。誰もが詩的に生きてるわけじゃないもの。海底に転がった石塊を見て、いちいち数百万年の時の重みを噛みしめる人がどれほどいるというの。それより、他にも楽しい企画はいっぱいあるでしょう。未来の水中ロボットとか、調査船の厨房拝見とか。私ね、ヨットクラブの仲間に声をかけて、『オーシャン・ポータル』に掲載できそうな写真をいっぱい送ってもらったの。朝焼けの海、青空に映えるディンギーヨット、月の輝く入り江、どれもプロ級の素晴らしい作品ばかり。気を取り直して、トップページに掲載するメッセージでも考えなさいよ。今日からでもコンテンツを作成しないと、調査に間に合わないわよ」

<中略>

「俺が潜航調査を実況したいのは、君が二言目には『くだらない』『面白くない』と言うからだよ」

「どういうこと?」

「君は海のことをよく知ろうともせず、『面白くない』と切って捨てる。『面白くないこと』の先は見ようとしない」

「それを私に知らしめるために、わざわざ実況を企画するわけ? 関係者にけんもほろろに断られても?」

「そうだよ」

「冗談でしょう」

「本気だよ」

「どうしてなの?」

「君は前に言ってたな。どんなに一所懸命に生きても、自分は決して日の当たる場所で栄光に浴することはない。幸せではない人間にとって、生命がどうだの、生きる価値がどうだの、そんなことはどうでもいい、と。でも、価値観も揺るがすようなものを目にしたら、多少は見方が変わらないか」

「それと深海調査にどんな関係が?」

「深海の生き物を見れば分かる。意味が無くても、名無しでも、その存在に未だ気付かれなくても、みんな生きてる」

「それはステラマリスの話でしょう。ウェストフィリアの海に潜っても、何も無いと思うわよ」

「何も無いことはない。ウェストフィリアの海だって生きてる。生きているから、ここには地熱があり、雨が降り、深海にも様々な鉱物が生成される」

「それで私の価値観が変わると本気で思ってるの?」

「一度は見せてやりたい。君にも幸せになって欲しいから」

「……どうして?」

「君に多少なりと愛情を持ってるからだよ。affection ってやつさ」

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火山島ウェストフィリア近海の海底鉱物資源の探査に乗り出したファルコン・マイニング社はヴァルターに深海調査をオファーする。潜水艇パイロットの矜持から引き受けるが、ファーラー社長の介入で現場の士気はガタガタ。しかし海洋学者やオペレーターらの真摯な探究心により、次第にチームは一丸となる。そして未知の海底で目にしたものは……。
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宇宙文明の根幹を成す稀少金属《ニムロディウム》をめぐる企業の攻防と社会の展望を描いた本格的な海洋ロマン。
「これが生だったのか、それならよし、もう一度」をテーマに人と社会、仕事と生き甲斐、恋と女性のライフスタイルなどを描いた人間ドラマです。Kindle Unlimitedなら読み放題。

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